根管治療
根管治療について
根管治療が必要な症状とは
根管治療が必要となる症状には、多くの場合痛みが発生しますが、痛みがなくても治療が必要なケースもあります。その一つが先ほどもご説明した根尖病巣です。根尖病巣があっても、必ずしもすぐに治療を行うわけではありませんが、健康な歯に悪影響を及ぼす可能性がある場合には根管治療が必要です。しかしやっかいなことに、根尖病巣にはほとんど自覚症状がありません。つまり、「痛みがなければ治療は不要」という判断はできないのです。治療が必要か否かの判断には、医師による適切な診断が必要になります。痛みがないから大丈夫と思い込まず、きちんと定期検診を受けるようにしましょう。
根管治療とは具体的に
どんな治療?
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麻酔
通常、局所麻酔で治療を始めます。
非常に痛みが強くて麻酔が効きづらい場合は、抗生物質と鎮痛剤で急性症状を和らげてから治療をする場合もあります。 - 根管治療前の準備 唾液が根管内に入らないよう、必要に応じて隔壁を作って根管内に唾液が入らないようにし、ラバーダムを装着します。
- 根管内の掃除、殺菌
感染した歯髄や腐った歯髄を除去して、ファイルという器具で根管をお掃除します。
根管内のお掃除が終わったら、根管内を薬品で洗浄し、根管内を殺菌します。 - 根管充填
根管内の殺菌が終わったら、ガッタパーチャとバイオセラミクセメント(MTA)を充填します。再感染しないように、隙間なく詰め物をします。
※根尖の崩壊が大きすぎて規格化されたガッターパーチャでは緊密に充填できない場合はバイオセラミクセメント(MTA)のみを充填する場合もあります。 - 歯冠修復 根管の治療が終わったら、被せものの治療を行います。
痛みに対する配慮
治療中の痛みを取り除くために表面麻酔後に局所麻酔を行います。
神経を取る治療の後には痛みが出ることもあるので、必要に応じて痛み止めを処方します。
よくある質問
使用している機器について
教えてください。
- マイクロスコープ
- ラバーダム
- エンドモーター
- Ni-Tiファイル
- MTA
マイクロスコープの必要性は
なんですか?
精密な治療を行うため、当院ではマイクロスコープという機器を利用します。
歯科用顕微鏡ともいわれ、肉眼よりも最大20倍視野を拡大することができます。
根管治療では、根管内の感染部位を除去するのですが、根管内は非常に細かく分岐しているため「肉眼」だけでは、十分な治療をするのは不可能です。つまり、感染部位をしっかりと除去しきることができず再発の可能性が高まります。
しかし、肉眼の20倍も視野を拡大できるマイクロスコープを利用することで、肉眼では見えない部分もしっかり見ながらスピーディーに治療できるため、「成功率の向上」や「抜歯リスクの低減」、そして「治療期間の短縮」というメリットが生まれます。
ラバーダムとはなんですか?
ラバーダムとは、治療を行うときに歯に装着するゴムのことです。口全体を覆って治療する歯だけを出すので、細菌がお口の中に入るのを最大限防ぐことができます。
ラバーダム利用することによって
どのような効果がありますか?
ラバーダム防湿がない状況での根管治療は、唾液や他の歯に着いた汚れなどの細菌を根管の中に入れてしまい、根管を無菌状態にして清掃することは非常に困難となります。以上の理由から根管治療にはラバーダム防湿が必要と考えております。
しかし、日本でのラバーダム防湿の使用率は10%未満とも言われていますのでなかなか聞き慣れない、また経験がない方がほとんどだと思います。(欧米など先進国では当然のように使用されています。)
長期的な予後では、ラバーダムを行った歯の根の治療の成功率が90%以上とされているのに対して、ラバーダムを使用しないで治療を行った場合の成功率は50%以下と報告されています。そのため当院では、患者さまが希望されない場合以外はラバーダム防湿をしております。
感染症の予防など、衛生面で
気をつけている点を教えて
ください。
基本方針は「スタンダードプリコーション」という概念です。これはCDC(アメリカ疾病管理センター)が提唱している感染対策であり、「すべての患者の汗を除く体液は感染性のあるものとして扱い、これらに触れる場合や触れる可能性がある場合は対策を行うこと」と定義されています。
歯科領域で問題となる体液には「血液」と「唾液」があります。これらの体液が患者さまから患者さまへうつらないように、医療機器の消毒・滅菌、医療従事者がきちんと手指衛生(手洗い)やグローブの装着をすることは医療機関として必須の行為です。
まず医療機器の消毒・滅菌についてご説明いたします。治療に使用した歯科治療器具には金属等の熱に強い再利用可能なものや、プラスチック等の熱に弱い再利用不可能なものがあります。金属等の再利用可能なものは、まず洗浄を行います。その後、高圧蒸気滅菌器という機器を用いて滅菌を行います。洗浄で取り除けなかった残りの汚染を処理します。プラスチック等の再利用不可能なものは全てディスポーザブル、使い捨てにしております。このような処理を行うことで安全な医療機器で治療を行うことができます。しかし、医療機器が安全になっただけではスタンダードプリコーションには不十分です。加えて必要なことは医療従事者に感染予防の知識があること、グローブ等の保護具を装着していること、医療行為による汚染が広がらないように対策を行うことです。
他院で治療途中でも相談・治療は可能ですか?
可能ですので、お気軽にご相談ください。